- Vol.1 - SRDがロウイングを変える ”オールの回転力とボートの推進力”

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ロウイング運動におけるリカバリーとドライブ時で、適切なフットストレッチャー角度が異なる事に起因する問題を解決し、漕手の出力をより効率よくボートに伝達させて、ボート・人間系のパフォーマンスを向上するSRDシステム(フットストレッチャーとシューズ)と、既存システムとの比較。

Part1 靴の曲げ戻しによるエネルギー浪費と痛みと疲労の発生について

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従来のロウイングボートのフットストレッチャー(以下FS)は、靴底部分とFS板がネジ等で固定されているものが多い。 そのため、このシステムでロウイングを行う漕手は、リカバリー時シートをスターン側に滑走させながら、中足趾節関節を屈曲させると同時に靴底を折り曲げ、ドライブ時曲げた靴底を戻しながら脚伸展させてレッグドライブを行う。(図1)

この一連の動作は、

1. ストロークごと靴底の曲げ戻しの繰返しによる、靴変形に掛かるエネルギーの浪費

2. 漕手が出力した脚伸展力は、足関節が背屈し靴底の踵部分がFSに付かない間、中足趾節関節部分だけを介して靴底に伝えられる。そのため、この部分の面圧が大きくなり局所的な痛感と疲労の発生

という問題を伴う場合が多い。 これらの問題は、リカバリーとドライブ時の脚関節の屈曲や伸展動作の都合の良いFS角度が異なることに起因する。 リカバリー動作に適したFS角度は、ドライブ動作のそれより浅くなる。(図2)

しかし、既存システムでは、ストローク中にFSを、リカバリーとドライブに適した角度に変えられない。
そのため、漕力をもっとも発揮できると思われる、36度から45度あたりに設定されている場合が多い。

SRDでは、バーチャルピボット(以下VP)を中心に回転する”ブランコ”の乗り板部分に、靴がビンディングを介して固定される。
このような構造によって、リカバリーでシートがスターン側に移動して、膝関節が屈曲するにつれてブランコは自然に太腿側に傾くので、中足趾節関節を曲げることなく、窮屈感のない自然な膝関節と腰関節の屈曲が可能になる。
ドライブでは、シート移動に従い踵が太腿から離れる方向にブランコが傾くので、自然な足関節角度を保ちながら膝、腰関節を伸展する事ができる。(図3)

そこで、SRDが及ぼす影響を知るために、シングルスカルでレース状態に近いSR30で漕ぎ、SRDと既存システム間のロウイングの違いを確かめた。

Part2 ドライブ中のボート推進力とオール回転力の比較

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ここでは、(図4)に示した、スターボードサイドの、ドライブ期間のオアロックピンで測定したボートの推進方向の力(FOP)とオール振り角(θ)から算出されるブレード部のオールの回転力(FBR:以下オール回転力)、ブレード部のボート推進力(FBP:以下ボート推進力)の関係からSRDと既存システムの差異を説明する

図4は、SRDと既存システムの典型的なボート推進力(FBP)、オール回転力(FBR)とオール振り角(θ)の変化パターンを表しており、この図のストロークのドライブ期間のボート推進力(FBP)を時間で力積した値は、SRD:9.1(sec・kgf)現行:9.2(sec・kgf)でほぼ等しかった。 ボート推進力(FBP)は、ドライブの立上りからオール角:負32(度)まで既存システムがSRDより大きく、負32(度)から正10(度)まではSRDの方が大きくなる。

この実験の被験者は、ドライブ初期からボート推進力(FBP)を発生させるために、漕手が最も前に出た時、バウ側に大きくブレードを振って、キャッチから出来るだけオールを強く引くことを意識してロウイングを行っていた。

このようなロウイングでは、キャッチ時からオールを強く引くために、それを支える脚伸展力が必要になる。

そのため既存システムで漕ぐ時、リカバリーの局面では中足趾節関節を含む足、膝、腰関節群をあたかもバネのように縮めて、バウ側に大きくブレードを振る。

そして、ドライブ開始と同時にそのバネが解放するような反動動作で脚伸展力を発揮して、ドライブを開始し、SRDより大きな推進力を生んでいると推察した。

しかし、ブレードのオール回転力(FBR)とボート推進力(FBP)の関係から見ると、振り角(θ)がキャッチ側にあるほど、オール回転力(FBR)に対するボート推進力(FBP)成分が小さくなる。

また、オール振り角(θ)ゼロ度付近でのオール回転力(FBR)が大きいほど、よりボートを加速させる。 既存システムはSRDよりボート推進力(FBP)のピークの位相がキャッチ側に寄っている。

これらのことは、既存システムは機械的効率の低いオール振り角度(θ)、負65(度)から負32(度)間でSRDより強くドライブしていることを示している。

一方、SRDでは機械的効率の高いオール振り角(θ)がゼロ度に近い負32(度)から正10(度)あたりで、より大きなオール回転力(FBR)となっている、このことは、SRDが既存システムより、より効率よくボートを加速させることができる範囲で大きなドライブを発揮していることを表わしている。

SRDと既存システムの機械的効率の差異をドライブ全体で見るために、ボート推進力(FBP)とオール回転力(FBR)の力積の比率(%)(ボート推進力(FBP)の力積/オール回転力(FBR)の力積)によって比較した。

その結果、9ストローク分の平均値と標準偏差は、SRD:80.7±0.8(%)、既存システム:79.2±0.7(%)でSRDが1.5(%)有意(P<0.05)に大きかった。

SRDはオール回転力(FBR)がボート推進力(FP)に変わる効率の高いオール振り角範囲で、既存システムより大きな推進力となっていることで、ドライブ中のオール回転力(FBR)の力積に対するボート推進力(FBP)の力積の比率が大きくなる。

このことは、SRDは既存システムよりも機械的効率の良いロウイングを可能にすることを表していると考えられる。その要因として、VP機能で脚伸展に応じて靴の踏み面が変化することと、硬い靴のソールで脚伸展力を発揮し易い構造になっていることが挙げられる。

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