- vol.3 - SRDが効率の良い低疲労のロウイングを可能にする

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SRDは、オールの機械的効率が最も低いドライブ開始から、脚伸展力を発揮し易い角度に靴底の踏み面が変化し、発揮された脚伸展力は硬い靴底によって、足裏全体で効率よくフットストレッチャーに伝達できるため、脚伸展に関与する筋群の負荷が減少して、既存システムより疲労の少ないロウイングが可能になる。


Part1 ドライブ開始時のシート変位とオール角変位

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既存システムのフットストレッチャー(以下FS)は、中足趾節関節(足の親指の付け根)部から指にかかる靴底部分とFS板がネジ等で固定されている。

そのため、漕手はフォワード時シートをスターン方向にスライドさせながら靴底を折り曲げ中足趾節関節を背屈させ、足,膝,腰関節を屈曲した窮屈感あるフロントトップの姿勢から、脚伸展力によってシートをバウ方向動かすと同時にオールを引き、ドライブを開始する。

SRDでは、バーチャルピボット(以下VP)を中心に回転する”ブランコ”の乗り板部分に靴底がビンディングで固定されているため、フォワード時シートがスターン方向に移動して、膝関節が屈曲するにつれブランコが自然に太腿側に傾き、中足趾節関節を曲げることなく、膝関節,腰関節を屈曲することができる。
このため、SRDは既存システムと比較して窮屈感のないフロントトップの姿勢が可能になり、VP機能によってフロントトップで脚伸展力を発揮しやすい角度に靴底の踏み面を変化させたのちドライブを開始する。

ここでは、上述したフロントトップからドライブ開始時のシートとオールの動きに注目し、シートの変位,オール振り角,ブレイド部のボート推進力等の情報により、レースの状況に近いSR30で漕いだ場合の既存システムとSRDの違いを説明する。

図1はSRDと既存システムの典型的なドライブ開始前後のオール振り角の変位とシート変位パターンの関係を示している。
既存システムは、オール引き始めとシートのバウ方向への移動が同時に起こる。
これは、フロントトップで中足趾節関節を含む足,膝,腰関節群を屈曲させた状態で静止し、その姿勢からレッグドライブを開始することを表している。
図2は図3の釣合式と計測したオアロック部分の推進力(FOP)から算出した、既存システムとSRDのハンドル部のオール引き力(FH)と、オールを引く時のFSの反力に相当すると考えれる力(以下FSの反力(FRS))の変化パターンをドライブ開始からオール角度ゼロの範囲について表している。
既存システムはドライブ開始からオール引き力(FH)とFSの反力(FRS)のそれぞれのピークに至るまでのドライブの前半、SRDより急峻に立ち上がっている。
この事は、既存システムはドライブの前半、SRDより大きな脚伸展力を発揮していることを表している。

このようなSRDの特性を生かして自身のロウイングのパフォーマンスを向上させるために、本実験の被験者は以下のような手順で、シングルスカルによる実漕を通してフットストレッチャー(以下FS)周りのリギング最適化を行った。

Part2 ドライブ中盤で発揮される脚伸展力

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一方、SRDはシートがバウ方向に移動し始めた後にオールが動く(図1)。

これは、フロントトップの靴底の適切な角度と、ドライブ開始時の靴底の適切な角度が異なるため(図4)、ドライブ開始前、VP機能によって靴底の踏み面がスターン方向に回転して、膝が体幹方向に寄りながら膝関節が伸展するためにシートがバウ方向に若干移動することを表している。
このようにSRDでは、フロントトップの姿勢から靴底が脚伸展しやすい角度になった時点でドライブを開始するため、フロントトップの静止した姿勢から脚伸展とドライブが同時に始まる既存システムより、FSの反力(FFS)とオールの引き力(FH)の立ち上がりも(FH)が緩やかになり、オール引き力(FH)ピークの位相も既存システムより遅くなる(図3)。
これらの事は、SRDではFSを押す脚伸展力がオール引き力に変換されやすく、オール引き力がブレイドのボート推進力に変換されやすい、よりストロークの中盤に脚伸展力を発揮することを示している。
オール角度の絶対値が大きいドライブの前半は、オール引き力が、艇速に変化されにくいことはR&DレポートVol.2で述べた通りである。

以上のことから、SRDは、ドライブ前半脚伸展力を発揮する筋の立ち上がりが既存システムより緩やかになり、ドライブ中VP機能によって靴底の踏み面の角度が変化し、自然な足関節角度を保ちながら膝、腰関節が伸展して発揮した脚伸展力を、硬い靴底によって足裏全体で効率よくFSに伝達できるため、特にドライブ前半ロウイングに関与する筋群の負荷を減少させ、既存システムより疲労の少ないロウイングを可能にする。